nicol96

誰がハマーショルドを殺したかのnicol96のレビュー・感想・評価

3.6
ポスト帝国主義の闇を垣間見るサスペンスタッチなドキュメンタリー。
第二代国連事務総長の命を奪った1961年の飛行機墜落事故、その背景に迫るデンマーク人とスウェーデン人ジャーナリストの物語。

監督のマッツビュルガーが主演その人なので、まずは陰謀があった前提で撮られてる作品であること、彼らのバイアスが否定出来ないことは留意したほうがいい。

なのでこの作品の全て真実か、あるいはフェイクか、そのグラデーションのどのへんに位置してるかはあまり重要ではないと思うが、一方で我々が享受している資本主義が如何にアンフェアで不確かなものか、ということをただただ深く痛感させられた。

ただ唯一ポジティブに思うことは、電子ベースであらゆる情報が残り得る今の時代は、紙でしか残せなかった当時に比べ、情報の秘匿性を保持する難易度が格段に上がっていて、自らの寿司ペロというデジタルタトゥーに苦しむ少年が日々生み出される一方で、世界全体としてはまともな方向に進んでいく淘汰圧があることで、
あらゆるレイヤーの人種が相互に干渉し合う、権威主義的な為政者と考え無しのティーンズ達には厳しい時代になりつつあるなぁと。

作品としては、スノーデンとかが好きな方には良いかもしれないけど、黒人秘書にタイプライターを打たせながら監督自らが調査録を淡々と回顧するというちょっとクセのあるスタイルで話が進んでくので、いっそもう少し展開にスピード感や濃淡を付けるとか脚色したほうが面白かったのでは、とも思う。
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