あぶりかんぱち

劇場版 SHIROBAKOのあぶりかんぱちのネタバレレビュー・内容・結末

劇場版 SHIROBAKO(2020年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

まず2時間という尺をフルに使い切った作品だな、というのが最初の感想かなーと思います。もちろんポジティブな意味で。
『アニメ好きが見るアニメの作り手たちの物語』として、多くのアニメファン及びアニメに限らずこの社会で働く人たちの共感を呼んだ作品の劇場版として十分満足の出来。一旦はばらけてしまっていたムサニの面々が、ひとつの作品を軸に集まっていく…それだけでも本編ファンにとっては見る価値のある作品だったと言えると思います。
4年後もがきながらもそれぞれの形で逞しく生きるアニメーション同好会の5人や、将来を見据え動き続ける人、逆に困難にぶち当たって足を止めてしまった人…そんな様々な人たちが『自分の満足のいくものを作りたい』という思いで立ち上がり、同じ『完成』というゴールを目指す。境遇は違えど本編で作られた『SIVA』のストーリーにもそんなアニメ作りのONE TEAMな感じが重なるように取り入れられていてやっぱり上手いなーと思いました。
ただ、『これをアニメ12話に落とし込んで見てみたかった…』という惜しさを感じてしまったというのも正直な感想です。本編であれだけ手広く立体的にアニメ業界を切り取ったSHIROBAKO作品のファンとして、新たにこの4年後という設定を上手く使ってもっと掘り下げられたのではないかと。リアルな作品だけに描いた分だけ大勢の人にスポットが当たるし、逆に省くほどストーリーに薄さが出てしまうのは仕方ないことなのかな、と思いますが、約120分という尺の中で過去を説明しつつ新しいアニメを作るぞ!という展開を持ってくるのはキツさもあったんじゃないかなーと思いました。(実際映画の中でも太郎の自信作と意気込んだカットが全ボツという描写があって、この映画もきっとそうなったシーンがあるんだろうな…と思わずにはいられなかった…あるなら何とかして見れないものか…)
しかしながら限られた尺の中でムサニの面々に少しずつスポットを当てていくのは流石。しかし…!更に登場する劇場版からの新キャラ。目立ったところではオタク混じりの言葉使いながらも誠実そうな制作の新人くんとSIVAの尻拭い担当に就いたアシPちゃん。この2人の新キャラを出すなら何でアニメ業界に入ったのとか、どんな夢を彼女自身が持ってるかとかしっかり掘り下げる描写が欲しかったかなーと思います。まだアシPちゃんの方は二面性とかもあって面白かったけど、制作くんの方はただただいい奴というだけで終わってしまっていたような。その辺りの設定をほったらかしにせず取り込めたらもっといい作品になったんじゃないかと素人ながら思いました。(表面上は凄く気の利くヤツだけど実はアニメにかける情熱なんてまるでない、好きでもないみたいなタイプがみゃーもりの前に現れたらどんな態度を取るか、的な)
キャラクターにスポットを当てると、本編では1番飛躍が遅かったずかちゃんが4年後5人の中で1番輝いているのが嬉しかったりしました。仕事場が違うし比べるのはおかしいんだろうけど、苦労が長かった分報われているような描写は『努力は必ず誰かが見てくれている』というメッセージを含んでいるようで自分自信も頑張んないとな、と思えました。
そして今作を通して1番言いたかったことは映画の最後に持ってきた『夢は遠くても、必死にあがくことで見えてくる明日がある』ということなのかな、と僕は受け取りました。
『アニメ製作』という過程を通じて社会人としての仕事の難しさ、夢との両立、人との関わり合い等を描くSHIROBAKOという作品、やはり何度見ても学ぶものがある人生への訓示的作品としてこれからも大事に見返していきたいと思います。
あぶりかんぱち

あぶりかんぱち