ペジオ

マザーレス・ブルックリンのペジオのレビュー・感想・評価

マザーレス・ブルックリン(2019年製作の映画)
4.3
「もし!」…『ジョーカー』に理解者がいたら…

本作のライオネルと、かの映画のアーサーは良く似ている
自分ではどうする事もできない障害のせいで、周囲からは「フリークショー」…「人間扱いされない」
人間扱いされない者は誰かを人間扱いすることも無く、全てが「象徴」の様に見える
安易に「俺vs世界」という思考になってしまうらしい
二人の違いは、ライオネルには彼の障害を「気にするな」と言ってくれる人間が味方には勿論、敵の中にも少なからず存在するという点
そこからくる安心感がライオネルの佇まいにユーモアを与えている気がする(アーサーの途方も無い悲壮感に当たるものが、ライオネルの場合ぺーソスにとどまっていると言うか…。)
アーサーが夢想するほどに求めた理解者のいる世界線
「カリスマ」になるしかなかったアーサーと、「人間」としてささやかな幸せを得たライオネル
それぞれの結末はそれぞれの映画の「あり得たかもしれない結末」を示唆していて切ない気持ちになる

チック症の盛り込み方に限らず、シーン一つ一つを面白くしようとする気概は映画のあらゆる作業に関わったエドワード・ノートン(製作、監督、脚本、主演)の熱意の表れだろう
その結果の144分という映画の長さははさほど気にならかったが、やたら細かいカット割りは良い意味で気になった
細部が気になって仕方がない主人公のリズムに合わせたという事なのかもしれない
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