YohTabata田幡庸

郵便配達は二度ベルを鳴らすのYohTabata田幡庸のレビュー・感想・評価

4.0
久し振りに邦題の意味のわからなさに絶句した。原題 ’Ossession’ 英題 ‘Obsession’「郵便配達は2度ベルを鳴らす」の何も当てはまらない。当時は独占欲的な物をそう言い換えていたのだろうか。すごく素敵な邦題なだけに何それ感が半端ない。「郵便配達」は出て来ないし「2度ベルを鳴ら」さない。強いて言うなら色々な事が違う形で2度繰り返されるくらい。マヂ何でこのタイトルなの?前情報なしでタイトル通りの何かを期待していた私は相当面食らった。

閑話休題。私はイタリア映画弱者だし、名作と名高いし、ルキノ・ヴィスコンティなので、勉強がてら観る事にした。ヴィスコンティ作品は「ベニスに死す」を観ただけなので、作家性については分からないが、若い男を色っぽく撮るのがとても上手いと言う印象。本作も然り。若くてそこそこイケメンでムキムキの男の、まぁ、魅力的な事。

前述の通り、本作は重要なシークエンスを必ず繰り返す。オープニング、トラックの窓から延々と続く目の前の道を写して行く。そしてクライマックス、改めて車窓からの風景が映し出される。一度は離れた家に主人公は戻るが、そこで繰り広げられるのはどことなく第一部で観た光景に似ている。幸せなはずの男女は言い合いをし、陽気な音楽が流れても何処となく不穏だ。イタリア独特の温度感と嫌な湿気が纏わり付く。男は疑心暗鬼になり、街で知り合った女性と相引きをする。最初に籠の中の鳥だった女に手を出した様に。
そして彼等の純粋な想いは彼等を破滅に導く。

改めて、私が観て来た多くのアメリカの作品や今のメジャーな映画の理屈とはまた別の文法で動いていると見せ付けられた。男が、女が彼に惹かれていると気付いたと言う描写の飛躍や描写はイタリアだからか、それともヴィスコンティだからか。

とても勉強になった。
YohTabata田幡庸

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