かぴばる

グリーン・ナイトのかぴばるのレビュー・感想・評価

グリーン・ナイト(2021年製作の映画)
4.5
 14世紀イングランドで書かれた作者不明の物語『ガウェイン卿と緑の騎士』を原作としたダーク・ファンタジー。

 原作はあまりに古いこともあり、物語の詳細な部分は参照の都度膨らまされることになる。今回デヴィッド・ロウリー監督には、モラトリアムを脱する青年の心の成長の物語として描かれた。うそ、中世舞台にそれやるんだ、というテーマである。

 ファンタジーと銘打たれているがこれは本当の意味での「ジャンル」のことであり、派手な魔法や剣戟は一切登場しない。物語は詩的に静的に展開し、ガウェインは試練を乗り越えながらも淡々と進む。

 正直暗喩的な部分が多く、意味がわかったかと言われればこれはまったくわからない。が、それが面白くないことになるかというとそうではない。緻密に設計された情景や美術、音楽はそれだけで堪能できるし、絵画的な美しさを備えたカットの数々は脳のファンタジーを求める部分に直接語りかけてくる。

 わかったふうな口はとてもきけないが、わからなくても良い、わかる部分を味わうのだ、そう覚悟を決めて鑑賞すると、緑の騎士は莞然と微笑みこう言うだろう。

 「よくやった、首と共に去りなさい」