序盤の30分くらいは退屈で間延びしている感じが否めないが、ビクトリアが女装男子「ビクター」としてデビューしてからが面白い。
ゲイの偏見に悩む男と女(体面では男)の恋愛というシリアスなテーマを、巧くコメディとして落とし込めている。
メリー・ポピンズ役で有名なジュリー・アンドリュースが歌う「LE JAZZ HOT」の力強さに心を奪われる。聞いているだけで指を鳴らしてリズムをとりたくなる。
ビクターが男だと知ったキングが口をあんぐりするシンプルなギャグが心地よい。
ゲイ役のロバート・プレストンとビクターの信頼が如何ほどか判る「You And Me」も名曲。恋敵(?)のレスリー・アン・ウォーレンの下品すぎるショウ「Chicago, Illinois」の潔さには感動すら覚える。
フラメンコ調な「The shady dame from Seville」のエモさも良い。コメディ映画として、有終の美を飾るに相応しい曲となっている。
オチの愉快さと幸福度が高く、気分が落ち込んだときにまた見直したい。