このレビューはネタバレを含みます
昨年鑑賞して以来、2回目を観た。
この作品は間違いなくオールタイムベスト。
作品の舞台は束の間の天国(山頂)と地獄(戦場・地下)、そして地上(ジャングル)へと移り変わる。
天国と地獄を経た彼らは、ジャングルに舞台を移すと、徐々に野生的な姿へと変貌していく。
逃亡を図った博士を捕らえるシーンは、最悪のケースを予感させる危うさがある。
一方で博士も、生きる延びる為にスウェーデンを殺し、文明化された現代人にも危うい野生性があることを見せつける。
かつて欧米人が唱えた「野蛮人」とは一体何だったのだろうか。
ラストの急流に流されるシーンは圧巻以外の言葉が見つからない。
その後の細かい泡の粒が舞うシーンは新しい生命の誕生を予感させる精子のようにも見える。
次のカットでは1人生き延び、新たな生命を得たランボーが下流に横たわっている姿が映される。
そして清流と濁流の合流シーン。
清流は跡形もなく土色の濁流に飲み込まれているようにも見えるし、
濁流から浄化されて綺麗になった清流が流れているようにも見える。
我々は野生的なサルから純化されて理性を持つヒトになったのか。
あるいは、ヒトも結局は野生の生き物の一員に過ぎないのか。
そして空撮で映し出される「文明的な人間社会」も本質的には、これまでのジャングルとさほど変わらない場所なのかもしれない。
最後に、生き延びたランボーの顔に笑顔はない。そして映画は終わる。
人間はヒトなのかサルなのか。あるいはそのどちらでもない存在なのか。
人間はなにをもって人間たらしめるのか。
そうした人類学的な深い思索にも導いてくれる素晴らしい作品だと思う。
アーティスティックな映像でありながら、エンターテイメントとしても楽しめる。
これからも何度も見返したい。