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ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONEのsyuheiのレビュー・感想・評価

4.0
2023年のクリストファー・マッカリー監督作品。

あらゆるデジタルデータを操作できるAIがロシアで生まれ悪の手に渡れば全人類を脅かす脅威に。そのAIにアクセスする2本の鍵を入手すべくIMFはイーサンこそ適任であるとして奪取の任務を伝える。鍵の1本を盗み出したイルサと接触したイーサン、だがAIの手先として動く謎の男ガブリエルが立ちはだかる。

シリーズ7作目は前後編に分けてのリリース。タイトル"Dead Reckoning"とは船舶や潜水艦などの乗り物をデータによって動きを推測しながら動かす操縦法(推測航法)のことだそうな。ベイジーやルーサーに加えて前作(Fall Out)に登場したイルサやアラナも再登場するが本作から観ても全然問題ない作り。

本作でイーサンらが立ち向かうのは現実の悪党ではなくAIという脅威。ちょうどアメリカで展開中の脚本家・俳優らの組合によるストライキが一部にAIの利用制限を求めていることと奇妙な一致を見せている点が興味深い。それゆえ最先端スパイツールを封じられたイーサンらの戦法は泥臭いアナログ方式だ。

全2作のうち前編なので全体の評価はまだできないが本作単体でかなり面白かった。デジタルスパイガジェットを奪われたイーサンたちが文字どおり体当たりで挑む数々のアクションは迫力があるし、迂遠で面倒に思える鍵の奪還計画もなにしろオンラインが使えない縛りがあるのでプロット的に整合する。

本シリーズの目玉となるトム・クルーズ自身による度肝を抜くアクションは、予告で何度も観せられたしメイキング動画が事前に公開されてるし本編上映前に監督とトムの短い挨拶映像も挿入されるしで虚実が転倒したような錯覚で興醒めするかと思いきや全くそんなことはなく気がつけば手に汗を握っていた。

今作では『アラビアのロレンス』『キートンの大列車追跡』『ジュラシックパーク』『カリオストロの城』といった古今東西のアクション映画史を辿るようなシーンが組み込まれており、そうした系譜の最先端としてトム・クルーズのアクションを位置づけんとする意図を強く感じた。崖からバイクで飛び降りるアクションではなく彼自身の全力疾走シーンも含めて。

単に無茶する自分を見せたいだけではなく物語上の必然としてそうしたアクションが組み込まれている点をこそ評価したい。劇中イーサンがつぶやく「俺の命よりも仲間が大事だ」というセリフはこうした数々の本人アクションを裏打ちする決意表明なのかもしれない。良いところで終わるので後編が楽しみ!

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