TaiRa

mellowのTaiRaのレビュー・感想・評価

mellow(2020年製作の映画)
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やっぱ今泉力哉はオリジナルが良い。爆笑した。ともさかりえ最高。

胸に秘めた気持ちを一方的に伝える事の緩やかな暴力性を氾濫させた喜劇。相手の事を考えようが考えまいが、私の、この想いを伝えなければ気持ちが収まらない、という大変迷惑なエゴイズムを滑稽で愛おしい物として包み込む。花屋の田中圭はそんなエゴイズムと縁遠いから、不意の告白にキョトン顔連発。彼は気持ちなんて抽象的なものでなく花を通して、あるいは労働を通して他者と繋がっているから。亡き父の店を継いだ岡崎紗絵は労働にも恋愛にも答えを出せない。彼女は他者と関わる事自体に距離を置いている。エゴイズムへの反発。「愛情というより情でしょ、下手すりゃ同情」とクールに吐き捨てる彼女に「情じゃダメかな」と言えてしまう田中圭が救いになる。人と人とが分かり合うだとか、心が通じるだとか、そういうものを信じない。愛すらも。人はただ乱暴に他者と関わり合い、わがままに生きる事しか出来ない。それを避けたところで身動きが取れなくなるだけだ。わがままに生きれば何処へでも行ける。「ひこうき!」と空を指差す岡崎紗絵を見たら、「かわいいなコノヤロー!」って叫んじゃうよ。
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