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ミセス・ノイズィのmitoのレビュー・感想・評価

ミセス・ノイズィ(2019年製作の映画)
4.0
2020年144本目。
騒音おばさんを題材にして、メディアや情報発信者の在り方を描く。

自分が幼い頃にワイドショーを席巻した騒音おばさん、この映画では環境や顛末こそ異なるが布団をバシバシ叩いて、近所迷惑となっているおばさんがメインキャラクターとなっている。

そのキャラクター的なインパクトとは裏腹に描く問題は非常に社会派で世に情報を発信する者の安易な発言や情報によって、大衆は敵にも味方にもなる危うさと、ヒートアップした時の恐ろしさを描いている。

視点は2つあり、
騒音おばさんに被害を受けたと感じているスランプ中の子育て女性小説家、そして騒音おばさん。
小説家の視点では、子育てと小説の両立で余裕がない故に、おばさんが非常識だと色めがね含め怒りに震える展開に。
その小説家の体験したイベントを今度はおばさん視点でなぞり、小説家に見ていない要素があったかを描く。

最近、メディア側視点で、自らの力の危うさを描く映画が多い気がするが、その中でもかなりドラマチックな展開も相まって感情に訴えかけてくるものが強い。

この展開でお察しだが、登場人物が挙って余り良い性格ではない。
小説家は再起のために育児放棄し、何なら騒音おばさんを悪者にする事で現実から目を背けている感があるし、
小説家の夫は何故か善人扱いだが育児を母である小説家に任せっきり(この男が終盤、偉そうに許す立場にいるのが、地味にフラストレーション)
小説家の弟は自分の下心だけで無計画に身内を食い物にするし、
編集社の人間は止める人もいるが、騒音おばさんの一件が大ヒットしてイケイケと囃し立てる。
思った以上に、この汚い人間模様にイライラが募ったりするので、人によってはただ不快になりかねん。

あと、実際の騒音おばさんの話が、真偽はあるものの、作品以上にぶっ飛んだ展開なので、それを知っちゃうと「事実は小説より奇なり」という事を実感してしまったり…。

色々書いたが、非常に、心に響く映画。
おすすめ。
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