ソラアユム

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホームのソラアユムのレビュー・感想・評価

4.8
『彼らの運命を救いたい…』


2022年4本目(劇場鑑賞2本目)
IMAX2Dにて
MCU版スパイダーマン3部作完結編

再鑑賞日:2023年10月7日

【総評】
 MCUの新たな境地(というよりMCU的にはこれが本命か…)である“マルチバース”という多元宇宙世界要素を取り入れ、あらゆる意味でネクストレベルに到達している究極のシネマエクスペリエンス。『エンドゲーム』以降、若干下火気味になっていたMCUへの期待と妄想が膨らむ最上の一本だった。新年早々に2022年TOP10確実の作品ではないだろうか…

【良】
 アクションが素晴らしい。とにかく素晴らしい。作劇がネクストレベルに到達しているのは言うに及ばずだが、アクションの外連も段違い。毎作言っている気がするが、過去最高では。スパイダーマンとドクターストレンジがミラーディメンション内で魅せる、超絶ド級の立体起動アクションと魔術の応酬が大変目に楽しい。2022年SFアクションの基準が今作になってしまったことは幸か不幸か…『マルチバース・オブ・マッドネス』への期待が高まるばかり。アクション配分も良く、序盤、中盤、終盤と息を呑む至高のアクションの目白押し。
「奇跡的」とはこの作品のこと。マルチバースの扉が開いたことによって生じた多元宇宙からやってきたキャラクターとのアンサンブル、様々なヒーローの運命が交差する予想以上に重要な作品(インフィニティサーガにおける『シビル・ウォー』の様な位置づけでは)。マルチバースの概念を取り入れたことで、“何でもアリ”になってしまう懸念もあるが、手に余るような作劇をまとめ上げるMCUの手腕は見事というより他ない。“世界を救う”の世界の対象にヴィランを入れたのは、唸らされた。ヒーロー映画のテーマのアップデートとしても新境地では。

【悪】
 決して隙無し映画というわけではなく、ストーリーの都合上、粗のあるシーンは少なくない。ストーリー全体の構造としては、予告編からも予想できる通り、ピーターやストレンジの迂闊さが、世界滅亡の危機を招いたのは言うまでもなく、これは『エイジ・オブ・ウルトロン』にてトニー・スタークが犯した失敗に通ずるマッチポンプを感じる。ストーリーが進む中で、最も目立つ粗として挙げられるのは、ピーターの別世界からやってきたヴィランに対する扱い方が迂闊すぎる点だろう。別世界からやってきた悪党がこの世界ではおとなしくしているという考え方は浅はかすぎる。これをピーターの“若さゆえの過ち”の一点張りで片付けてしまうのは、いささか疑問が残る。もちろん、この過ちによって後にピーターが大きな犠牲を払うことになるので、脚本の狙いとして分からなくもないが…

【まとめ】
 MCUの今後を占う最重要作品。劇場で見る価値のあるアメイジングな傑作。


以上