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ジャンゴ 繋がれざる者のnetfilmsのレビュー・感想・評価

ジャンゴ 繋がれざる者(2012年製作の映画)
4.2
 南北戦争勃発前夜のアメリカ南部。賞金稼ぎのドイツ人歯科医キング・シュルツ(クリストフ・ヴァルツ)は、お尋ね者三兄弟の顔を知る黒人奴隷ジャンゴ(ジェイミー・フォックス)を見つけると、彼を奴隷から買い上げ、お供に連れて三兄弟の追跡に繰り出す。その後、ジャンゴの腕を見込んだシュルツは、彼を賞金稼ぎの相棒にして2人で旅を続けることに。しかし、そんなジャンゴが真に目指す先は、奴隷市場で生き別れた最愛の妻ブルームヒルダ(ケリー・ワシントン)を探すことだった。やがて、彼女が極悪非道な農園領主カルビン・キャンディ(レオナルド・ディカプリオ)に売り飛ばされたことを突き止めたジャンゴとシュルツ。2人はキャンディに近づくため、ある周到な作戦を準備する。冒頭、『ジャッキー・ブラウン』以来、久方ぶりの最高に格好良いタイトルバックに痺れる。ゴツゴツした岩場をカメラはゆっくり後退しながらパンしていくと、足を鎖で繋がれた黒人たちがゆっくりと歩いている。その背中には何回も何十回もムチで打たれて爛れた皮膚が映し出され、BGMにはセルジオ・コルブッチの『続・荒野の用心棒』のメイン・テーマが流れる。赤色のタイトル文字もセルジオ・コルブッチが手がけたマカロニ・ウエスタンによく似ている。

 今作では最初からタランティーノの「復讐」のモチーフが1本の線として明確に提示される。これまで以上に単純明快な、主人公ジャンゴによるお姫様奪還劇である。ドイツ人歯科医キング・シュルツによって、鉄の鎖を解かれたジャンゴは、白人と同じように正装し、馬に乗っている。肌の色が黒い人間が、あたかも白人と同じように振る舞い、時にはブルジョワジーである白人にさえ盾突く。その異様な姿は、シュルツとジャンゴがキャンディが営むキャンディランドという農園に着いた時に沸点を迎える。キャンディはスティーヴン(サミュエル・L・ジャクソン)という執事に客人を持て成すよう求めるが、彼は自分と同じ黒人であるジャンゴに対し、あからさまな不快感を露にする。『ジャッキー・ブラウン』には白人vs黒人の単純な図式には収まらないアメリカ合衆国の病巣が隠れていた。南北戦争勃発前夜のアメリカ南部において、白人が多くの黒人を奴隷のように扱っていたのは紛れもない事実であるが、その富裕層の白人たちに媚びて取り入っていた黒人も存在したのである。彼らは自分たちと同じ黒人をひたすら軽蔑し、白人オーナーのご機嫌を取ろうとする。彼らの姑息なご機嫌取りが、とんでもない事件へ誘い込む食卓の場面は実にスリリングで目が離せない。
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