Kz氏

返校 言葉が消えた日のKz氏のレビュー・感想・評価

返校 言葉が消えた日(2019年製作の映画)
3.8
返校とは、学校に戻るという意味。ホラーゲームの映画化で、「サイレントヒル」みたいな悪夢の異界巡り。だけど、夜の学校に蠢く異形は、国民党独裁白色テロ時代のメタモルフォ-ゼ。

1947年の本省人(台湾人)による外省人(在台中国人)政権抗議デモから1987年まで40年に及ぶ戒厳令下を白色テロと呼ぶ。作品には、「お前を殺すことは蟻を踏み潰すくらい簡単だ」という、民主化運動家時代の李登輝への脅迫の言葉も出てくる。

反共を大義名分にした国民弾圧は、二二六事件以降敗戦までの日本に酷似している。スタンダール「赤と黒」が禁書とされていた逸話を聞くが、「返校」はそのままの世界。
民主化運動を経た台湾や韓国では、共産党政権に対峙する徴兵制を保ちながらも、エンタメでも反独裁の作品が作り続けられている。本邦では、「兵隊やくざ」にもその色彩はあったのに、「私は貝になりたい」はどこへ消えてしまったのだろう。

本省人にすれば、「犬去りて、豚来たる」(犬〔日本人〕が去って、豚〔中国人〕が来た。犬の方がまだましだった。)が、親日の本音。日本統治に感謝しているわけではない。自国に対しても他国に対しても、脳天気な歴史夢想を捨て去らないと今に酷いことになる、気がする。
Kz氏

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