せりな

オフィシャル・シークレットのせりなのレビュー・感想・評価

3.5
英米がイラク戦争開戦を有利に進めるために、国連を盗聴していたことに意を唱えたGCHQの諜報員の女性のお話。
大量破壊兵器の存在に多くの諜報員たちは懐疑的であったにも関わらず、強引に戦争へ向かおうとするイギリス政府に疑問を持っていた彼女は、嘘に基づいた戦争を止めたくて行動を起こすわけなんだけど、正義感と国家に逆らうことへの恐怖感に揺れ動く様が非常にリアルだった。
政府のやり口の汚さと、国家に逆らうことができないように法整備が進められている現実に、国家権力に対する監視の目の必要性を改めて感じた。

「政府は変わる。私は国民に支えている」という彼女の信念と、彼女と共に戦った弁護士のレイフ・ファインズ、第一報を報道したオブザーバー紙の記者のマット・スミスも素晴らしかったです。
「官邸のご機嫌取りを止めて、記者は仕事をしろ」というセリフにも重みを感じた。日本のメディアには彼等のような信念を持った人は、どれくらいいるのだろと思ってしまう。

イラク戦争に関してはアメリカ側も裏でゴタゴタがあったわけで、それに関しては「バイス」を見ればよくわかる。イラク戦争がいかに嘘にまみれて行われた戦争であるかがわかるし、犠牲になったイラク市民に申し訳なくなる。この事件が発覚した時に、アメリカ及び日本では殆ど報道されてなかったことからも、当時のメディアは政府の肩を持っていたんだろうなと感じた。
実話ベースではあるけれど、社会派サスペンスとしても面白かったです。

キャサリン・ガンは台湾出身だから、今の台湾の状況に関しても色々と思うことがあるだろうな。
せりな

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