ウズラ

プリズン・サークルのウズラのネタバレレビュー・内容・結末

プリズン・サークル(2019年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

観たかった映画が、このコロナ禍のおかげで、仮説の映画館というサイトから観ることができたのは嬉しい。(もちろん映画は映画館で観たいけど!)

観れてよかった。すごくおもしろかった。おもしろいというと語弊があるかもだけど、対象者が犯罪者なだけで、自分がやっていることと近いので興味深かった。


受刑者が罪と被害者や遺族とちゃんと向き合うために対話が重要であること。
語っている人全員が、幼少期に親に虐待されたり育児放棄されていたり、いじめを受けていたり、その事実に呆然とした。
暴力を振るわれていた被害者が、やがて暴力を振るって加害者になってしまう負の連鎖。。。
心をなくし、一線を超えてしまった人たちなだけで、私たちと紙一重だ。

人はだれでも悲しみや苦しみ、怒りを抱えていて、それを他人に話せるようになることによって、ようやくその事実を自分から離す(放つ)して本質と向き合い、何度も反芻していくことで、回復していくことができるのではないか。

話すこと/話を聴いてくれる(共感してくれる)人がいることの重要性を改めて知る。
表現することは癒しになる。

TC(セラピューティック・コミュニティ)プログラムのことを、「教育」と言ってたのも興味深い。
教育とはなにか?を考えていたのでタイムリー。


一番驚いたプログラムは、ロールプレイ!
そんな酷なことまでするのかと。
自分の起こした事件の加害者役を本人がやって、被害者役(叔父、婚約者など)を他の受刑者がやる。
面白いと思ったのは、被害者役の人が役に入りきっていて、「私に対してどう償うつもりですか?」「こっちは傷ついてるんですよ?!」とか犯人を本気で責めていて、加害者の言葉に涙まで流していたこと。
そもそも全員、受刑者なのに!!他人の事件だったら冷静に被害者の立場になって考えられる不思議。苦笑してしまった。
演劇の有用性を感じた。

映画の中では出所した人達も出てきていて、それまで刑務所の中の人たちは全員顔にモザイク処理されていたのに、出所した人たちは一人を除いて、みんな顔出ししていることにも驚いた。
自分の罪を認めて向き合って更生し、隠すことなく生きる強さをTCで身につけたのか。

この取り組みがもっと広まり、他の刑務所にも導入されればいいのに。取材対象者がインタビューを重ねるごとに変化して感情を取り戻している様を見てそう思った。
いや、その前に、犯罪を犯してしまう前に、安心して生きづらさを語り合える場を作る必要性を感じた。
ウズラ

ウズラ