既存の多重人格者、サスペンスなストーリーを想像して観ると、肩透かしな気持ちになる人がいるかもしれません。
7人の1人が殺人を犯すわけでもなく、あっと驚く展開が待っているわけでもありません。
充分特殊なのですが、すごく淡々として平凡な日常が描かれています。
それでも、観終わったあとのなんとも言えない優しい気持ちに、自分でも驚かされました。
1週間を1日しか生きられない日常を送る、7人の僕が愛おしく、そしてつまらない日常の繰り返しの自分のことをも愛おしく感じられるのです。
帰り道じわじわ来る映画です。
主演の中村倫也さんは、良心を演じさせたら、彼の容姿表情は右に出るものはないかもしれません。
それなのに厄介な問題児もドンピシャはまる、力量を持っています。気負わずさらっとそこにいる感じがなんともスゴくて、舌を巻きます。これからどんな役どころを演じていくか楽しみな俳優です。彼ならまだまだ二十代も違和感がないので、幅広い役ができると思います。
一ノ瀬を演じた女優さんもナチュラルで良かったです。
初めての長編映画を撮った吉野監督の今後に期待します。
