リョウ

リチャード・ジュエルのリョウのネタバレレビュー・内容・結末

リチャード・ジュエル(2019年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

法執行官に憧れ、努力を重ねて正義を貫きながらその端くれだとしても尊厳を持ちながら職務を全うする主人公と、かつての職場で知り合い、リチャード曰く、その職場で唯一彼のことを人として接した弁護士であるワトソンが合衆国政府と法執行官に立ち向かうストーリー。

冒頭で、リチャードが憧れの職に就くことになったとワトソンに報告する場面では、「権力を持ったらモンスターとなる、そうなるなよ」とワトソンがリチャードに警告する。

リチャードはそこから時が経っても自身の思う正しさを信じて仕事を続けていた。
それがときには行きすぎた行動となったり、他人からは小馬鹿にされたとしても堅実にこなしてきた。

映画の主題となっている爆破事件の直後、地元紙の女性記者がFBIのエージェントから掴んだネタを記事に書き、世間はリチャードを糾弾する。

それまで憧れである法執行官として、プライドを持ちひたむきに努力してきたリチャードは、法執行官に裏切られることとなってしまう。

報道という権力や、合衆国政府という圧倒的な権力を持つ記者や捜査官は「モンスター」のように彼と彼の母の生活をぶち壊す。

混沌とした生活の中で、「どうやってあなたを守ればいいのか分からない」と泣く母に対し、「守るのは僕の仕事だ」と言い切ったリチャードは腐っても正しい法執行官であり、FBI捜査官たちの傲慢な振る舞いを見て、それに疑問を抱きつつも最後まで自分の正義を信じ、法執行官としてのプライドを捨てなかったと感じました。

無実の罪を記事にし、世間を扇動し、自身のペンにそれだけの力があると過信してモンスターとなった女性記者が、彼が実は無実であったと知ってからどうなったのかを描いて欲しかったなと思いつつ、冒頭でのワトソンのセリフ通り、権力を手にしたときにモンスターとなってしまうのか、そうはならないのかの対比構造での戦いという一面も見られて面白かった。

実在の事件を元に作られた映画だとしても、これはフィクションですと言われても信じられるくらい浮世離れしたストーリーに聞こえてしまう。しかし、実際にはどこかで幾度となく実際に起きてしまった事件であるし、我々世間一般がメディアリテラシーを持ち合わせて生活していかなければいけないと感じました。

真実がどうなのか、その人物が一体どんな人間なのか、何も分からないままに、かの女性記者のごとく、好き勝手に意見を全世界に向けて、特定の個人に向けて、容赦なく発信できる時代に生きる僕らこそ、リチャードがそうされたように、誰かの生活、人生を壊してしまう危険性を持っていると意識させられてしまいました。

ただのドキュメンタリー映画に留まらず、脚本、演出含めていい映画でした!オススメです!!
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