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リチャード・ジュエルのforest4taのレビュー・感想・評価

リチャード・ジュエル(2019年製作の映画)
3.8
権力や影響力の持つ者たちの綻びによって事実が歪んでいき、受けるべきでない被害を受ける人々と彼らの戦いを描いた作品。
晒されては人々に追い込まれた時、誰かが信じて寄り添い共に戦うこととそこから持ち直し変わっていける力があるのはどれだけ恵まれてるかを思い知りました。

晒しあげやレッテル貼りによる侮辱が横行してそれがしやすい現代でこそ、この時代での流れとその場に生きた人を知るべきなのではないかと。これよりもっと酷く救いが無いケースがあるということをもう知っているんですよ、ネットに常駐してる自分たちは。

実際、リチャードの性格や行動はけっこう不安定で傍から見ても彼は本当に大丈夫か?ってなるんですよ(雇われ主から見て融通が利かない、手掛かりになるものはなんでも使うマスメディアに対して無用心だったり、不利に使われそうな音声の録音をなにも疑わずにやらされたり)。

そのために雇われ元からは疎まれるし人を注意しても舐められる始末。
注意のための喋り方というか距離の詰め方と体型も相まって彼はあまり人から好まれるとは言い難い近寄りづらさが見えました(ここは役者さん本当にマッチしてて見事でした)。

極論ですが今だったら彼のような人がなにか都合が悪い事したらスマホ一つですぐ晒しあげされてますよ。
現代では「誰かがキレる」「誰かがその場での問題な行動を起こす」がエンターテイメントと化してますので冤罪より酷い晒しあげのケースがありますしリチャードの警備員時代の行動がそれと重なって他人事とは思えません。

そういった晒しあげの警鐘やこの時代にあった情報の不透明さとそれをさらに濁らせる状況は今と変わらないことを見せられたので情報を発信しやすい今での自分の行動を改めて見直すべきと思えました。

しかしそういう警鐘以外にも人間との関わりには救いがあるという所も描かれており、それがリチャードの母親や彼を支えて共に戦う弁護士と友人の交流です。実際に起きたことがベースなので多少違いがあれど交友関係があるからこそ救済と成長があるんだと思えたのですが、それが無い場合はどうなってしまったんだろうと同時に。そこになんでか考えが繫がって去年公開のジョーカーと対になる作品なんじゃないかと思います(状況というか待遇が似ててそこからが地獄かどうかの違いというか)

今を苦しんでる人に対して優しくなれたり力になりたい、苦しんでるときに助けてくれてる人を失望させないようにもっと成長したい、そう思える映画でした。

あと外せないのがリチャードと共に戦った弁護士のワトソン。
この人がまぁ良い人で演じたサム・ロックウェルの人相も相まって良い友人だなぁ!って思っちゃったよ
バイスで演じたヘタレブッシュと大違いのイケメンぶりでしたね
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