旅するランナー

雨月物語の旅するランナーのレビュー・感想・評価

雨月物語(1953年製作の映画)
4.7
【国宝級!!】

映画評論家蓮實重彥著「見るレッスン 映画史特別講義」を読むと、溝口健二作品がえらく高く評価されています。
溝口健二映画を見ざる者、映画を語るべからず。
とまで書かれていて、これは拝見しておかなければと手に取った次第です。

結論から言うと「これは凄い!」。
人間の情と欲が深~く描かれています。
戦争に翻弄され、金銭欲・出世欲・色情欲に溺れ、人生の苦しみを味わう男たち。
男たちを支え、愛し、惑わす女たち。
三大女優(京マチ子・田中絹代・水戸光子)が圧倒的な演技で魅せてくれます。
そして、語り口、カット割り、美術、音楽...すべてにおいて完璧です。
ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞受賞もうなずけます。

困窮する庶民の生活を生々しく妖しく描いていて、最近の映画界の潮流にも通じています。
人間が生き続ける逞しさという普遍性も感じさせます。
そんな国宝級の現代的古典なのです。
映画ファン必見の名作です。