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雨月物語のokのレビュー・感想・評価

雨月物語(1953年製作の映画)
4.3
シンプルな構成でよく整理された脚本になっている。テーマが明確、とても伝わりやすい。
シーンごとに観客に示す情報の順番がとても的確なのですぐに物語に集中することができる。


金と女に目が眩んだ兄と、功名心に目が眩んだ弟の2人によって同じような意味合いのシーン二種類連続して描かれるので、物語の中でその出来事が意味するところがよく伝わる構成になっている。
同じような出来事、人生を生きる人物を物語の中に登場させることにより物語を客観的に、寓話として捉えさせる効果も生まれている。
同監督の祇園囃子でも過酷な芸妓の運命を生きることになる少女と同じ道を通ってきた遊女という人物配置になっており同じような効果があったように思う。
溝口が好むこの物語構造は物語に対する距離感の演出になっている。

水辺や船、霧、垂直に伸びたススキの幽玄性、映画的なモチーフが効果的に配置されている。
和楽器の音響効果による雰囲気の出し方も多少強引に感じたがよく効いている。
それぞれのシーンを的確に演出する手腕は見事。
残酷さは残酷さが際立つように直前に安心させ、女に見惚れる場面はより見惚れて見えるように直前に騒がしく声を張り上げさせる。 女の欲望や怪しさを感じさせるために積極的に女から身体的接触をさせ、卑怯な行いが引き立つように直前に親子の孝行、忠義を見せる。映画的面白さを忘れない唐突さや驚きを随所に配置している。


突出したシーンは霊となった田中絹代が夫と子供を見守るシーンだろう。
このシーンがなければ少し物足りなかったかもしれない。海外からの評価はちょっとオリエンタリズム入ってるんじゃないかなって勘繰りたくなる。

溝口の映画監督としての技量を存分に味わうことができる名作。
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