囚人13号

雨月物語の囚人13号のレビュー・感想・評価

雨月物語(1953年製作の映画)
4.5
その存在感が徹底して透明化されていながら、苛烈な運命を背負う溝口の女性は常に霊的なのだが中でも郡を抜いて異形なのが本作の京マチ子。

しかしその能面で冥界へ誘う彼女を凌駕するほどに霊的なのは男の妻であるが、逆に森雅之が溝口映画でも例外的なほど人間臭いのは彼女との対比で生きていることの証左となるからで。

権力に屈する薄弱な男性像の中で彼は珍しく父であり、『山椒大夫』と同じく家庭崩壊した親子の姿で終わるのも見逃せない。

画面強度を決定づける光と影という基本的なコントラストも当然凄まじく、ノワールのスモーク/街灯へ対応するような溝口の濃霧/燭火が一段と映える。
囚人13号

囚人13号