初溝口で右ストレートをモロに食らいました。すごすぎ。終始バキバキのライティング、モノクロームで一層映えた濃霧に包まれてこのまま死んでゆくのかと思った。カラー映画が普及し始めた頃にミゾグチが鬼籍に入ったことはある種の運命だったのではないか、とかも思っちゃう。虚実行き交う映画フェチとしてもたまらなく、シュミット『デジャヴュ』とかよりもっとスムーズにあちら側へ連れてかれる。最後源十郎が家に舞い戻った時のカットはどこで切れてるんだよ。
フェリーニ『道』との共通点。しかしこっちの方がずっと良い。肉欲、出世欲、金欲による破滅、失うもの。情けない男の醜態もさることながら、戦乱の世で男に置いていかれた女房たちの苦悩が描かれることこそ素晴らしい。彼女らは男たちの割を食うけれども、そのことにちゃんと嘆き、主張し、叱る。特に水戸光子の「死ねなかったんだ!死にきれなかったんだ!」は、真の壮絶さでもって心に迫るものがあった。しかし能面の美しいあの京マチ子に「あなたの器で、お茶が頂きたくなりました」なんて言われたら、ホイホイと付いていってしまうような…。