のこ

野球少女ののこのレビュー・感想・評価

野球少女(2019年製作の映画)
4.0
小さい頃に感じたあの「女に生まれたことの無力感」が思い出される。

なぜ、父は兄とばかり野球の話をするのだろう。なぜ、ソフトボールチームには他に女子がいないのだろう。わたしはなぜ兄とは違うのだろう。

グラウンドで声を張るたびに他と馴染まない自分の声に、そこに居ることが場違いな気がしてソフトボールを辞めた。ネットもまだ知らない時代でロールモデルなどいなかった。全力になって限界を知るのが怖かった。身体的性差への諦めと不合理なジェンダー差別への不満はもう既にその頃からフツフツとたぎっていた。

でも大人になって思うのは、例え今は不合理な現実だとしても、チョ・スインのように自分の全力を以って成長を諦めずにいれば視界は開けてくるかもしれないということ。誰かが社会を変えてくれるのをただ待っていても誰も人生の責任を取ってくれない。ほんの少しの後悔の念を抱きながら、チョ・スインのブレない闘魂に惚れ惚れとした。(これはあくまで自分個人の在り方の話であって、現代社会において実際にあるジェンダー差別などの問題を個人の責任へと転嫁したり、問題の矮小化を意味するものではもちろんないことを明記しておきたい。)

昨今の韓国ではフェミニズムが「ブーム」との言葉も耳にしたことがあるが、男女差別やジェンダー格差の問題が根深く残る韓国にてこの映画が製作・公開されたことに大きな意味があると思う。
のこ

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