イチイ

夏時間のイチイのレビュー・感想・評価

夏時間(2019年製作の映画)
2.5
父親の経済的困難のために、祖父の家に引越することになったきょうだいのひと夏の生活を描く。

物語は中学生くらいの長女の視点で語られ、はじめて自転車で街をまわった夕暮れ時や、家族の揉め事が起きたある日の夜など、ただごく普通の毎日の出来事が語られていく。なんの劇的なことも起こらず、ただ起きてはなんの結末もな消え去っていく出来事。

でも、郊外の坂の上に立つ古びた物言わぬ家(とそこに暮らす祖父)での暮らしを見ていると、そうしたただ過ぎ去って行った日々の積み重ねの上に家族の歴史が出来てきたのだとも感じる。草木の生い茂る庭やくたびれたソファ。色させた婚礼写真や階段を登ったところの使われていない古いミシン。結局、重ねてこぼれ落ちて消えて行ったものたちの中で、残されたのはこれだけだったんだと。
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