千年女優

夏時間の千年女優のレビュー・感想・評価

夏時間(2019年製作の映画)
3.5
多感な10代の少女で、事業に失敗して母に愛想をつかされた父に連れられて弟と共に祖父の家に引っ越したオクジュ。慣れない古い家での暮らしに加えて離婚間近の叔母も住み着くなど居心地の悪さを感じる彼女が、恋心を抱く同級生とのデートのため父が抱える偽ブランドの靴を売ろうと画策するなどして過ごすひと夏を描いた青春映画です。

幼い頃から映画に親しんで一度は就職するも夢を追って入学した檀国大学映画コンテンツ専門大学院で映画を学んだユン・ダンビが二本の短編映画で評価を得た後に卒業制作として脚本から手掛けた長編映画デビュー作で、釜山やロッテルダムらの国内外の映画賞へとノミネートされるなどしてに新たな女性の有望監督台頭と話題を集めました。

同じ有望な女性監督の作品とあって引き合いに出されるユン・ガウンの『わたしたち』やキム・ボラの『はちどり』とテイストを同じくする繊細な青春映画で、決して過度に劇的にせず少女の感情の機微を温かく見つめます。こじんまりとして私小説に過ぎるところはありますが、右往左往を経てこそ遂げれる僅かな成長が微笑ましい一作です。
千年女優

千年女優