蛇らい

ラーヤと龍の王国の蛇らいのレビュー・感想・評価

ラーヤと龍の王国(2020年製作の映画)
3.5
最初は世界観を広げ過ぎかなと懸念していたが、ストーリーの組み立てが要所でスマートになされていて、終盤の大きな展開まで緩むことがなかった。

アニメーション表現の美しさがまた更新されている。人物の身体の揺れや、表情のニュアンスなど技術の誇示だけではなく、表現の可能性の追求もされている印象だ。

今回はキャラクターたちのかわいさも際立つ。『ファインディング・二モ』のドリーの系譜を継ぐ軽快な龍のキャラクター、シスーをはじめ、盗っ人ベイビーと猿の盗賊などユーモラスで憎めないキャラクターを愛でることができる。

主人公の「自分に約束、死なない。」というセリフも秀逸。諦めないや負けないなどの前向きで、向上的なワードをあえて使わず、人生の最低限それで充分であるという意思表示と同時に、生きることの本質を突くような一言だ。

劇中登場する「龍の石」は明らかに核兵器のメタファーで、他国への疑念からそれぞれ国の長が牽制し合い、頑なに手放さない。世界の先進国が核を保有し続ける構図を、低年齢層に向けられたアニメの中でも表してしまう懐の深さに感服した。

ディズニー相手に、大手映画館を取り仕切る全興連が強気に出て、ディズニー配給の映画を加盟する映画館でかけないという運動が起きている。苦しい状況下でどちらの言い分も分からない訳ではないが、損得勘定を抜きにした映画業界の未来が明るくなるための選択をしてほしい。今までお互い、合理性のみに基づく理念を念頭に置いてきてばかりいたツケが回ってきたように感じる。
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