からかす

ラーヤと龍の王国のからかすのレビュー・感想・評価

ラーヤと龍の王国(2020年製作の映画)
3.5
いやーものすごく意識の高い映画で
なおかつエンタメ映画としてすごく楽しめたんだけど
大傑作となるポテンシャルを持っていたけど…惜しいと感じる。

単純にアクションエンタメとして小気味良くて
軽妙な劇伴に早送りかと思うくらいのテンポの良さで
「ミッションインポッシブル」的なチームものとして楽しい。
一方で直接描写こそないもののコミカルさの裏で
非常に悲惨な現実があることもさりげなく示唆される。
空のベビーベッドや物言わぬ者が一輪の花を送る仕草がそれで
ここはものすごくギョッとする強い描写だと感じた。

物語に通底するのは民族の垣根を取り払う精神であり
現実において分断しつつある世界の中で
手を取り合おうという精神を映画で描こうというのは
これはかなり意識の高い行為であり
しかも割と説教臭くなく描いてる分好感も持てる。
最後に龍の石を託した人物があの人であるのは最適解だと思う。

ただねえ良い点でもある極端なテンポの速さが悪い点でもあり
分断と不信を抱える主人公の考えの変わり方が速すぎると感じる。
この極端なテンポの速さの要因は物語の設定自体にあって
時間を割いてでも丁寧に説明すべき
物語を始める前提となる背景がある事と
結果仲間を集めるために回る国が4つもあることで
序盤に説明で時間を食い、
残りで4つの国でそれぞれ仲間を描きつつ…では
これはどうやっても早送りにせざるをえない。
結果として主人公の描き込みが不足してしまっている。

だから本当にもったいないと思う。
単純に上映時間を延ばせばいいかというとそれも違うと思うし
映画の脚本って本当に難しい。
ちなみにディズニープリンセスの造形としては上位にくるほど好き。

あとこれだけは言わないといけない。
同時上映の短編「あの頃をもう一度」はめちゃくちゃ好き。
からかす

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