このレビューはネタバレを含みます
中嶋駿介監督作品。
自分の体内に15センチの異物が入ってくることの痛みと恐怖。
この痛みと恐怖は主に女性側なら自明のことだと思う。
けれどそれらについて、本作品を観るまで全く想起していなかった。
この感覚をshareできただけでも本作をみてよかったと思う。けれど、そう簡単にshareできるものでもないと思う。エゴイズムに陥らないように気を付けたい。
またSP法が施行されたとしても男性が痛みを味わっても、女性に優しくできるわけがないという批判は的を得ていないように思える。
それはSP法へのデモやユウキの裏垢での愚痴でディストピアな社会として物語世界を描いていることから明らかである。つまりこの社会が実現しても、その社会に順応できる男性になれても、女性に優しくなれるわけではないのだ。
だから「SPを受けて彼女に優しくなれた」という友人の言説や性交人のパターナリズムな優しさこそ批判的にみるべきである。
ただし結局物語は、ユウキがSP法を受けて、「一人前」の男になることに帰結する。ユウキの成長物語、ディストピア社会への順応物語になっていることは否めない。もっと禍々しく、肉体的な痛みの共有がある気がする。それは後景に退いたデモという社会への痛みに、アヤカのビンタという肉体の痛みに可能性が開かれている気がする。
蛇足1
監督の建造物の嗜好が何となく分かって面白い。
機能主義で合理的で幾何学的な建造物。ディストピア社会で描かれる建造物。
蛇足2
アヤカ役の有佐さんよかったなー。