MasaichiYaguchi

stayのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

stay(2019年製作の映画)
3.6
自由を求めて過疎村の持ち主のいない古民家に不法滞在する男女5人。
ある日、そこへ村役場から退去勧告に矢島がやって来るところから物語は幕を開ける。
本作における矢島がユニークで、初っぱなから退去勧告にやって来た村役場の人間とは思えない行動を取る。
この矢島の視点から不法占拠する彼らの“生態”が垣間見えてくる。
本来彼らは夫々の事情に立ち入らず、互いに干渉しない暮らしを望んでいたと思うが、恰もリーダーのように他の者に指示を出す矢島みたいなのがいたり、何時の間にかサエコをはじめとして女性が賄い係になっていたりする。
職場や家庭のような「役割を押し付ける」コミュニティから彼らは逃れて来た筈なのに、それを“逃亡者”グループの中で作ってしまう矛盾。
この「不自由」が何時の間にか出来てしまったコミュニティに、そのコミュニティを解体しようとした矢島が囚われてしまうという皮肉。
だがアメーバのような彼らは、そんなことに何時までも固執しないし、我慢しない。
この集合・離散するアメーバのような彼らの“生態”を象徴するようなラストが印象的だ。