Tラモーン

still darkのTラモーンのレビュー・感想・評価

still dark(2019年製作の映画)
4.0
2年以上クリップしっぱなしだった作品。


料理人を志す盲目の青年ユウキ(高橋雄祐)はとあるレストランのナポリタンに衝撃を受ける。スタッフは募集していないと伝えられるが、料理長(永田健)に頼み込みなんとか見習いとして雇われる。1ヶ月後のパスタの試験をクリアするため、先輩アルバイトのケンタ(小谷けい)に仕事を教わりながら夢への一歩を踏み出す。


評判どおりめちゃくちゃよかった!
たった40分の短編なのが惜しいような気もするし、多くを語り過ぎないからこそよかったような気もする。

真っ直ぐな熱意で突き進むユウキ、底抜けに明るくて優しいケンタ、寡黙で厳しくもフェアな料理長。3人のバランスがとてもいい。

夢だけじゃ食っていけないし、生ぬるいだけの優しさで人を養うこともできない。
そんな現実の厳しさをチラリと孕みつつも、盲目でもとにかくこのナポリタンがつくりたい!という思いでユウキが駆け抜けた怒涛の1ヶ月がキラキラした青春と言おうか、大人になっても夢を追いかける姿がリアルに描かれる。

やんとか雇ってもらったのに皿洗いがまともにできなくて注意されたり、せっかくチャンスをもらったのに玉ねぎの厚みで怒られたり。わかるよ、チャンスもらえたのに活かせなかったときって本当ヘコむよな…。
そんなときに助けてくれるケンタの存在が本当に素敵。

"ユウキって彼女いるの?"
"いない"
"俺いる!いいだろ!"

健常者だろうが盲目だろうが厳しい上司だろうが真っ直ぐに向き合っている感じがいい。
終盤フライパンのナポリタンをこぼしてしばらく立ち上がれなかったユウキが、CDを買って帰ってきたケンタにすぐ笑顔を向けられたあたりに彼の存在の意味とか、2人の関係性が込められているような気がする。
ラストのパセリのシーンも切ないながらも彼の人柄が滲んでて素敵だな。

『still dark』

タイトルの意味が込められたラストシーンに痺れる。

ナポリタン食べたくなっちゃったな〜。
Tラモーン

Tラモーン