cattle

戦争と女の顔のcattleのレビュー・感想・評価

戦争と女の顔(2019年製作の映画)
3.0
「戦争が終わってよかった」とかいう言葉の、なんと他責なことかと。イーヤとマーシャの中ではきっとちっとも終わっていないんだけど、それだけじゃなく、戦争が終わってしまったことによるものがあるんじゃないの、むしろ。とおもいました。になってたらサムネにも描いてあったわ、たしかに。

戦争が終わったのだから私たちは元の生活に戻れる、幸せになってもいい、でもそうはできていない。そんなモヤモヤとした気持ちが、子どもという、型にはまった解りやすい幸福の形が欲しいと追う気持ちの表れになってるのかな。やり方はやや変なんだけど、君主的なところにも軍人を感じたり。
物語で2人はずっと息苦しそうだけど、きっと、気持ちや現実との整理はつけてるよね、つか、つけることができてしまっている。それが「やめた方がよかった。でも、必要だった」をずっと繰り返させている。つら〜。

原作『戦争は女の顔をしていない』のタイトルを見て、戦争の捉え方が自分の中でも随分変わったことに気づく。昔までは戦争自体が大きな悪だとおもっていて、たぶん恐ろしい悪魔みたいな顔を描いたと思う。でも今、私の中で戦争は顔のない忠実な兵士の顔をしている。男だったり女だったり子供だったりする。戦争の恐ろしさの本質は、戦争に関わったものの全員が自分の心を殺してしまうことを是とする部分だとおもう。見ててずっとやるせないけど、幸せにあることを諦めない静謐で力強い作品。
cattle

cattle