映画好きの柴犬

聖なる犯罪者の映画好きの柴犬のレビュー・感想・評価

聖なる犯罪者(2019年製作の映画)
3.9
善と悪の狭間

 少年院を仮出所した青年ダニエル(バルトシュ・ビィエレニア)が、身分を偽って小さな村の教会の司祭代理となる、サスペンスドラマ。

 ストーリー自体はほぼオリジナルらしいが、舞台となっているポーランドでは偽司祭事件は割とよくあることらしい。いわゆる「なりすまし」もので、偽物の方が本物よりも民衆の心を掴んでいくという、定番の展開。ただ、適当なことを言ったらたまたま核心をついちゃったっていう、ありがちな話と違うのは、ダニエル自身が感じた疑問や違和感から出た言葉だっってところ。綺麗事しか言わない既存の神父の言葉よりよっぽど心に響き、忖度と閉塞感に満ちた村社会に風穴を開けていく。

 しかし、このダニエル、神父として行っていることは正しいが、個人としてはかなり狂気を孕んでいて、見ていてかなり危うい(バルトシュ・ビィエレニアのギョロ目のインパクトは強烈)。そんな危うい行動があっても、神父という立場があればこそ、人々に受け入れられる。信仰とは、神を信じるのか、立場を信じるのか、人を信じるのか?善と悪は、言っている人によって変わるのか?色々と突きつけてくる作品だった。