Damian

ようこそ映画音響の世界へのDamianのレビュー・感想・評価

ようこそ映画音響の世界へ(2019年製作の映画)
4.2
映画ファンなら思わずおおっ!と声が漏れてしまう生唾もののシーンが満載。
そして、その全てが「映画音響」というテーマで繋がっているのも、なおさら興味深いところ。
劇中で映画音響の最前線に立ってきた彼らは何度も「プロダクションは評価してくれなかった」と口にする。
確かに俳優、監督、内容、映像、、と様々な映画要素の中で音の重要性が問われてきたのは特にここ最近な気がする。
ただ、彼らがいたからこそ映画、引いては劇場空間が劇的に進化を遂げてきたのは紛れもない事実であり、スピルバーグの「映画音楽は瞬間を永遠にする」という表現はとても腑に落ちた。

個人的なエモポイント。
「インセプション」のハンス・ジマーから「ブラックパンサー」のルドウィグ・ ゴランソンが新進気鋭の作曲家として紹介される流れがあるが、ノーランの最新作「テネット」ではこのルドウィグ・ ゴランソンがハンス・ジマーに代わり劇中音楽を務めている。映画音響の新時代到来を感じさせてくれるな〜

こうした職人系のドキュメンタリーだと、いかに功績を残してきたか、いかに後世に影響を与えてきたかに焦点が当てられ、その代償はあまり描かれないことも多いが、「スターウォーズ」の音響デザイナーを務めたベンバートはオスカー受賞後プレッシャーに押しつぶされ、一時期仕事が出来なくなったことを口にする。
当時のハリウッドだ。きっと労働環境も悲惨なものだっただろう。
彼は、その時支えてくれた家族に感謝しつつ、仕事で一番大切なことは楽しむことだと話していた。

彼らが命を削ってつくりあげた映画音響が素晴らしいことに変わりはない。
ただ、ハリウッドも人種、ジェンダー、働き方、給与体制、と様々な変革の時期を迎えている。
先代の功績を讃えるとともに、今の時代にあった新しい映画作りの側面も是非我々に伝え続けて欲しい。
Damian

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