Damian

ヤクザと家族 The FamilyのDamianのレビュー・感想・評価

ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)
4.5
これまで観てきたヤクザ映画は、暴力の美学とホモソーシャル的な男の友情に溢れていてある種その生き方を肯定するものが多かった気がする。
だからこそ、驚いたし、動けなくなった。
ここまでヤクザと人権、そして時代と共に変わりゆく立場を生々しく描いた作品は観たことがなかったから。
特に現代におけるヤクザの生き様はこれまで映画で観てきたそれと全く異なり、もはや文化遺産のようだった。

主人公は、ヤクザという道しか選ぶことができなかった男だ。
もちろん彼が真っ直ぐに信じて生きてきたその道は、決して社会的に認められるものではない。
でも、自分はどうしてもその選択や人生を否定することができなかった。

ヤクザだから、犯罪者だから、人権が無くてもしょうがない。
その家族だから、どうなったって構わない。

他人の人生の過ちを決して許さず、正義のヒーローの如く制裁する。
そんな現代に蔓延る大衆の選民意識の方がよっぽどゾッとした。

ラスト。
突然現れた父親のせいでこれまでの暮らしが全て壊れてしまった少女は、それでも父親の面影を求める。
そして、その意志を受け継ぐ青年も、彼女にかつての自分を重ねる。
主人公が命に代えてでも守ってきたもの。
それは血だけでは無い家族の繋がりだ。
その魂は、時代を超え、これからずっと続いていくように感じた。
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