みむさん

グンダーマン 優しき裏切り者の歌のみむさんのレビュー・感想・評価

3.5
アレクサンダー・シェアーがグンダーマンになりきっているらしく、普段のイメージと全然違う姿。劇中の歌もアレクサンダー・シェアー本が実際に歌ってるらしい。
彼は「異端児ファスビンダー」でアンディ・ウォーホル演じてた(そちらもまったく違う姿)。

人気歌手が実はシュタージ(秘密警察)の協力者だったという実話、歌手グンダーマンの伝記ではなくグンダーマンを通して東西統一前の監視の目がいかに市民の生活に入り込んで来たかを描いてるという感じ。

確かに市民スパイではあるけれど、スパイ映画ではない。
家族のために炭鉱で働き、仕事後は歌手として活躍するグンダーマン、彼の存在が目立つから牽制の意味もあるのか?と思ったらそんな感じではなかった。

どこにでもいる一人の男が甘い言葉に乗せられて協力してしまう。たぶん誰にでも起こり得ることだったんだろう。
普通に生活している職場の同僚や近所の人、学校の同級生などあらゆるところに非公式な協力者がいた、人々が監視密告しあう恐ろしい社会の話。

時代が時代とはいえ、バンドの仲間や職場の同僚を信頼しながらも裏切らなければならないグンダーマンの苦悩を描いた映画だった。

東西統一されてから告白に至った彼だけど、他にもアーティストがかつて非公式協力者だったと告白して衝撃が走ったそうな。

こんな時期が70年代~80年代にあったのだな。

シュタージの監視にまつわる映画他にもあったけど(善き人のためのソナタ、東ベルリンから来た女etc)、この映画はシュタージがふつーに市民の生活に入り込んでくる状況を描いて淡々としてヒリヒリ感がないが、その分とてもリアルに想像できてしまう。