まっきー

運命じゃない人のまっきーのレビュー・感想・評価

運命じゃない人(2004年製作の映画)
3.6
違う星に住み違う言語を話しているかのように感じられる程違う人間たちが、同じ場所に同じ時に存在し、日々を作っている。個人的に最近よく感じる、その不思議さが濃縮された映画だったと思う。

鍵泥棒のメソッドにかなり近い匂いがあった。主人公のような純粋に人の気持ちや愛情を信じる人間の存在も描きつつ、人の思いなんて曖昧なものを全く信じない人間の存在も描くところとか。
「他者」という、自分とは全く違う生物と繋がる行為に対して、異様さとか不気味さを感じる時はある。人が恋しい、繋がりたいと思った直後に、一人で生きないといけないんだという思いに囚われることもある。だから、映画の中で女性が、宮本とハグした直後にお金をとって家を出るとか、そういう不安定さが生まれる。

それを踏まえた上で、内田監督は「やっぱり人間は、自分の心を守るために、何らかの形で他人との繋がりを求めてしまう」ことを映画で描いている。例えば、婚約破棄された女性の最後の選択。組長が金で繋がるビジネスパートナーとしての関係を提案する時、「一人は寂しいよ」と言ったこと。
他者との繋がりの存在の根拠を求める先は、人によって違う(愛情、お金、利益など)。根底ではきっと皆「一人は寂しい」という思いを持っているから、自分が信じられる範囲内で、繋がりを持とうとする。そういう人間の姿に、内田監督は興味を持っているんだろうなあ、と本作と鍵泥棒のメソッドから思った。

組長の、真面目にしてるからこその滑稽さには笑った。組長のパート、よく思いついたな!とも思うし、よく他のパートと上手く組み合わせられたな!と思った。めちゃくちゃ話が練られている。

BGMの切れ方が、耳慣れない感じ。そんなお金なかったのだろうか。お金でなく、愛情や脳みその回転、時間を丁寧に詰め込みましたみたいな印象を受ける映画。