ジュリアン

カサブランカのジュリアンのレビュー・感想・評価

カサブランカ(1942年製作の映画)
5.0
例えヒューマニズム溢れる脚本だったとしても昔の映画は感動の押し売りをしてこないので存外メロドラマでも面白い。仏領モロッコにはアメリカへの亡命を希望するヨーロピアンが押し寄せ、通行許可証を巡るメロドラマが展開されるというお話の映画。

とりわけ、興味深かったのは、ナチス降伏の2年後に公開されているからか、ヴィシー政権への評価が色濃く反映されていたこと。

英雄的なレジスタンスはじめナチへの反骨心という虚構は、ヴィシー政権がユダヤ人迫害法を施行し、国民もまたナチス下で生き延びるために受動的な生活を送っていたという裏返しでもあるかのように力強く仮託されていた。夢が膨らんでいて大変良い。

あと、昔惚れた女のために頑張るというクラシックな原動力が大真面目に描かれているのも良かった。『君たちはどう生きるか』とか、アメリカンリベラルは「そんなのは獣でもできんねん!生物的に動機づけられずに命を賭けるのが人間やろ!」というとこまで進化してるので逆に新しさを感じた。