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カサブランカの教授のレビュー・感想・評価

カサブランカ(1942年製作の映画)
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「議論の余地のない傑作であり、おそらくハリウッドの愛とロマンスを象徴する作品である『カサブランカ』は、年を重ねるごとに良さを増すばかりであり、ハンフリー・ボガートとイングリッド・バーグマンがキャリアを決定づけるような演技を見せている。」
というのがロッテントマトの評価らしいのだが、かなり大袈裟には感じるが、とはいえ「あながち」とも思えるくらいには、隙のない映画だと感じる。

本作に限らずだが、映画が娯楽の頂点だった時代のハリウッドの豪華絢爛さ、というのがショットに表れていてまずとにかく眼福。
リック(ハンフリー・ボガート)の店内や往来の「モブ」のさりげないスペクタクル。
陰影が強調された奥行きのあるライティングなど、画面づくりにとにかく圧倒される。

本作の鋭さを感じるところは、その「スペクタクル」を上品なまでに後傾化させ、いわゆる「ラブストーリー」というか「メロドラマ」としてスタイリッシュに見せている点。
強面なのに情に脆いリックと、堅実な崇高な理想主義者であるラズロ(ポール・ヘンリード)の対比もわかりやすいが、それらを両天秤のようにどちらも愛するイルザ(イングリット・バーグマン)の芯にある強かさ。要は手玉に取っているのは彼女なわけで、物語の構造としても「強か」である。
それらの「三角関係」の持つ歪さと感情のドラマ、愛憎もそこまでウェットにならないようにチューニングされている。

舞台となる「カサブランカ」にはナチス政権下のドイツ軍、ヴィシー政権下のフランス軍。ニューヨーク生まれのリックなど多国籍な人物がひしめいているのも世界観に広がりがあって豊か。
また軽妙なルノー署長(クロード・レインズ)の食わせ者のキャラクターも非常に魅力的に描かれてもいる。

子供の頃に観て以来だが、当然当時は理解ができなかったが、今、改めて観るととても楽しめた。
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