プロパガンダと娯楽、ふたつの要素を兼ね備えたうえに、美しい音楽や粋な台詞の数々が散りばめられていて、なるほど当時の連合国としては理想的な映画だっただろう。
酒場に轟くドイツの愛国歌を、祖国を占領された人々がフランスの国歌で歌い負かすシーンがある。
先の『大いなる幻影』が描いた「ライン川の護り」と「ラ・マルセイエーズ」の対立は、ヒューマニズムの観点から中立な響きをもっているが、後の「カサブランカ」での2曲の対立は、勧善懲悪のドラマティックな響きがある。
彼らが歌っている場所カサブランカだって、フランス軍によって占領されたのだから、歌合戦にモロッコの愛国歌が乱入したっていい。