藍住

この世界に残されての藍住のレビュー・感想・評価

この世界に残されて(2019年製作の映画)
4.0
ホロコーストで家族を喪い傷ついた男と、同じように収容所で家族を亡くした少女が出逢って寄り添う。
第二次大戦後、激動の時代を突き進んだハンガリーで、同じ時間を過ごし、少しずつ人間らしさを取り戻していく「残された人達」を観て肩を震わせて泣いた。

アルドとクララは家族としての愛情だけでなく恋愛としての愛情が芽生えた瞬間もあったと私は思ったけど、そこには間違いなく戦争で負った、迫害された人間でしか共有ができない悲しみが生んだ一瞬の感情であったように思う。
例えばボタンを掛け違えてしまったような。
ラスト辺りでアルドはいつかの日と重ねてクララに接しようとするが、クララは何も無かったかのように振る舞う。
彼女はあの日のことを多分覚えていない。
今が幸せだから。
アルドはとてもショックを受けた顔をするが(ここのカーロイ・ハイデュクの演技は素晴らしすぎて一生忘れないだろう)、それは彼女が成長し、大切な人と幸せな日常生活が送れているという結果だ。
ここのお互いの認識の誤差というのがアルドの目線からすれば辛いことなのだろうが、それで良い。
『恋は雨上がりのように』と同じくらい、誠実な結末だった。
が、ラスト辺りで光が差し込んだように見えた後もハンガリーは暗い時代を突き進むので心から喜べないのが辛い。

どのシーンも素晴らしくて心揺さぶられたけど、中でもアルバムのシーンが凄かったな………。
辛すぎて嗚咽してしまった。
藍住

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