西川美和監督、役所広司主演、ハズレなし前提でのプレッシャーはいかばかりかと思いますが、私はハマりました。ガチ泣きです。
まず、役所広司演じる三上の綿密なキャラクター造り。福岡訛りの話し方、服役中の規律の中で身に着けた所作に温和さや実直さを感じさせる反面、収監された理由や服役中のエピソードなどを知るに、やはりキレたら怖い人なんだ…という人物像を押し付けられる事なく理解できる。
そして、今度こそカタギになるとの思いで、いわゆる「普通の人」と接していく事で、ヤクザというカテゴリがどこの「普通」にも収まらない特殊な存在である事を身をもって知っていく。服役中に身に着けた裁縫で、剣道の防具を作る仕事がしたい、と話す三上の可笑しさと悲しさよ…
また、「普通の人」である様々な人々、特にドキュメンタリー制作の依頼を受ける中野大賀演じる津乃田の存在も、三上のように特殊でない…というより、何者でもない自分自身を、三上との出会いによって自立していく過程を知る事で、客観視だけでは終わらせないメッセージを与えてくれる。
本作はなにより、女性陣の配役も素晴らしい。今時の作品には珍しく、どの女性も「支える」役割を担っていますが、ポイントはその支え方が別視点であるところ。女囚さそりの梶芽衣子さんが、まったく別キャラクターを演じている所など、エモいとしか言いようがない！
普通でいる事の不自然さや矛盾を、改めて思い知る傑作でした…
