このレビューはネタバレを含みます
この映画のストーリーは服役経験者の生き辛さ、マスメディアのあり方、育児放棄や児童虐待の問題などたくさんの社会問題を孕んでる。
まず思うのが、三上がチンピラ2人に暴力を振るってる場面で、長澤まさみがカメラを回したり、三上の人生をテレビで流すためのストーリーとして利用しようとするところ。三上に手を差し伸べるわけでもなく、ただただ撮る行為に不快感を覚えてしまうけど、でも撮ることで世間に伝えるという言葉も間違ってはいない。あの場で逃げ出してしまう太賀が一番一般人らしい行動。普通の人なら伝えることもせず、助けることもせず、ただ逃げる。でも映画終盤で太賀が三上さんに手を差し伸べてくれて良かった。
一見、きちんと社会に出て更生しようとしている三上だけど、時折見えるヤクザとして生きてきた三上の姿を見ると、どうしようもなく感じてしまう。世間から見放されてしまうのもしょうがないと思ってしまう。でもそう思ってしまっては、やっぱりダメなんだと思う。
それに三上が大声を出すときは、三上が自分勝手に叫んでいるのではなくて、うるさく騒ぐ若者や、親父狩りするチンピラ、自分を万引き犯だと決めつける店員だったり、世間が三上をヤクザに戻そうとしている。刑務所上りということで世間の目は冷たい、そして必要以上に三上をみんな怖がる。
三上の場合は、いい弁護士さんだったり、スーパーの店長、取材を申し込んだ青年、役所の人とか多くの手を差し伸べてくれる人に出会えたからこそ社会に戻ることができた。どこまで本当の話かは分からないけど、そうそう社会にあんなに刑務所上りの人間に優しくしてくれる人って居ない。
介護施設で、あべくんの話になったときの息苦しさ。三上が話を合わせてしまったことに、なんともいえない気持ちになった。社会の普通のレールに乗って生活することも別に楽しくないし、幸せじゃない。こうやって苦しんでる人を見て見ぬふりして、みんな生きてる。でもみんながそうやって生きてるから三上みたいに社会の網から抜け落ちた人が見捨てられていく。
ラスト三上はなぜ死んでしまったのか。自殺か、病死か。それは映画上では分からなかったけど、やっぱり今の現代では三上みたいな人が普通に生きていくことは厳しい。
