同調圧力にまみれたこの素晴らしき世界。
真っ直ぐな人達にとってはとても生きにくい世の中である。
西川監督の最新作。非常に楽しみにしていた。期待にそぐわない出来栄えであった。
西川監督は社会に取り込まれている人間の苦悩、葛藤の切り取り方が非常に優れていると本作を見て改めて思った。
現在公開中の藤井監督のヤクザと家族と立て続けにヤクザを題材にした現代社会を映し出す優れた作品に出会えているのは単なる偶然ではないのではないか。
優れた監督が共に取り上げたのは突然浦島太郎化した元ヤクザのフィルターで刑務所からシャバに出てきて感じる社会の変化と世界的なテーマになっている格差社会の流れである事他ならない。
この辺りからも今までの格差社会を取り上げた映画とは切り口が違う新たな視点であり監督の演出手腕を強く感じ取れた。
役所広司は人間味溢れる三上役を見事に演じている。
また冷たいかと思いきや親身に接してくれるケースワーカー役の北村有起哉もいい!
最近の映画は背景説明を全てセリフ化してしまう表層的な作品が多い中、本作は全体を通して観客に判断を投げかけてくれ劇中思考させてくれる。
ラストシーンなど最たるものであり、エンドロール後も余韻に充分に浸らせてくれた。