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すばらしき世界のmitoのレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.0
2021年17本目。
人生の半分以上を刑務所で過ごした男。
今度こそ堅気としてまっとうに生きると誓った男、三上正夫の葛藤を、彼に興味を持って取材を行う元TV番組ディレクターの視点も交えて描いたドラマ。

西川美和監督作品。
役所広司のヒールキャラは、もはや十八番芸となりつつある気がするね。

話のテイストはヤクザも絡む点も含め、公開中の映画「ヤクザと家族」に似ている。
かつて、繁栄していた世界から、時が過ぎ排除される側になってしまった世間のはみ出し者が再起を掛けるべくもがく様を描くのも共通項。

結末は真逆。
ヤクザと家族は、あくまで自分の尊厳を貫くような結末を迎えたのに対して、
本作は、例え自らのもっとうを捻じ曲げてでも、社会になじむ道を選ぶような結末を迎える。
真逆の道を進んでいる筈なのに、感じることは両作品とも同じ。
「一度道を踏み外したら、ここまでしても戻ることが出来ないのか・・・」という心苦しさ。

特に、この映画の場合は、
終盤のお祝いの席とその後の1シーンがその感情の最高潮を迎えるシーン。
祝われている筈なのに、どこか違和感を感じるディレクターの津乃田の何とも言えない表情と、
その後の普段の正夫であったら、そうなったであろう顛末をそうならないよう押し殺したシーン。

この2つは嫌でも心にズシっとのし掛かってくる。
終わり方の抑圧した雰囲気も、映画の結末に合っていて良い。
劇中で語られる、空の広さも相まって、何とも言えない気持ちになる。
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