建野友保

すばらしき世界の建野友保のレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.7
社会復帰をめざす三上が直面する出来事、周囲の反応を通して、現代社会が抱えている「生きづらさ」の表層や構造があぶり出される秀作ですが、それにも増して西川美和監督の仕事ぶりが強く印象に残りました。
どうすればここまで、人の心に寄り添えるのか。人が抱えている悲しみや辛さ、苦しみ、怒り、喜び、安堵、不安…さまざまな心の動きを、ここまで繊細かつ丁寧に掬い取った脚本、質感のある映像を作り上げた西川美和監督に、ただただ感服し、感謝の気持ちで胸が一杯になりました。
原作はあるようですが、これに背中を押された西川監督のオリジナルと言って過言ではないのでしょう。役所広司さんの「入り方」がただ者ではないし、仲野太賀さん、六角精児さん、キムラ緑子さん、長澤まさみさんの演技にも感服。ムダなシーン、台詞が何一つありませんでした。そして三上が感じ取った「すばらしき世界」とは何か。その最後の閉じ方がまた素晴らしい。
ソープランドのシーンが泣けて仕方がありませんでした。お金で買った優しさの中に、客とソープ嬢の人生が透けて見える。あんな描き方なかなかできないですよ。
建野友保

建野友保