ほのか

すばらしき世界のほのかのレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.3
すばらしき世界、にするのは自分自身。



他人は自分の鏡とはよく言ったもので、"自分自分自分"になっていると周りもそう在るようにみえるし、楽な道を振り切ってなんとか前を向こうと踏ん張ってる姿は周りをも動かす。

上手に生きられないなら生きられないなりに生きるしかない。
対等でいたくて、騙されたくなくて、舐められたくなくて、だからって暴れたら余計に取り残される。冷静に冷静にって思ってもすぐにできるわけじゃなくて、失敗しても何があかんかったんか自分じゃわからない。三上の行動は三上にとってはとても正しいことだからね〜。
これまでの経験を活かしたいのに、それは今の社会では通用しなくて、それってこの歳でこれまでの自分を全て捨てなきゃいけないってことで、置いていかれる感覚と我慢の連続は観てて辛かった。

自分をまっすぐ貫き通すのは美学ではあるけれど、この社会で生きていくには、この社会の輪に入りたいと思うなら、折り合いをつけるしかない。自分を生きるのは自分だけど、自分が自分がって思いすぎていいことなんてひとつもないんだよなあ、悲しいかな。
なんでもかんでもまっすぐじゃ生きづらい。目を逸らすのも自分じゃないみたいで座りが悪い。許せると許せないの境界線は人それぞれで、社会という軸は倫理観よりもずっとぶれてる。

普段私は、普通とはなんぞや、普通で在らなくていい、って思うんやけど、三上は普通になろうとする。じゃあまた普通ってなんだってなってくる。そんでやっと、社会という大きな世界の上にいるのは当然のステータスで、そっからどう生きるかっていうのを私は模索してるんやなあってわかった。社会の上の最も何の憂いもなく生きていけるようにみえる曖昧な一点だけを目指すのが"普通で在る"で、でもそれだけが幸福じゃないんだよが"普通で在らなくていい"って思ってる。なんやかんや私も社会で生きていきたいんだわ……。


役所さんと仲野さんが一緒にお風呂入ってるところめっちゃよかった…。1番泣いた…。原作あるって知ってたから余計に。おふたりの演技に何度息が止まったか。とても素晴らしかった。
役者さんみんな声がすごい通る通る。
まっすぐ届く感じ、キムラさんの高笑いが透き通ってて、でもちゃんと重みがあってすご…って思った。それにしてもあんなにビニ傘似合わん人おる??ビニ傘似合わんって感情初めて抱いた。
この前ヤクザと……観たところだったから北村さんが「反社には申請おりませんよ」って言ってたのちょっとふふってなった。せやね〜。
架空OL日記がすきなので酒木さんだ!ってなった。山田さんは普通が服着て歩いてる人があまりにハマり役。




「シャバは我慢の連続。
 でも、空は広い。」