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すばらしき世界のleylaのレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.2
犯罪者の出所後の再犯率は半数近くだという。元受刑者を受け入れる会社が少ないので、仕事に就けず、生きていくために再犯を犯す。それだけ前科のある人にとっては生きづらいという社会の問題点が描かれています。

役所広司演じる三上は、物心ついた時から少年院に入り、前科10犯。殺人罪で刑期を終え出所するところからはじまる物語です。

母の愛が足りずに育った三上は、気は短いがまっすぐで優しい。子供のように純粋な男。

出所後、彼の人柄に惹かれた人々が応援してくれて、この世界も捨てたもんじゃないと思える。
その人たちに応えようとヤクザの道に戻らず、普通に生きようと努力する三上の姿は懸命で涙ぐましいほど。

普通に生きていくということは、見て見ぬふりをしてやりすごすことが大半で、まっすぐな三上にとっては、普通であることが生きづらい。
いじめられている人を見たら放っておけない優しさが生きていく邪魔をする。
なんて皮肉な世の中なんだろう。

彼にとって、この世界はすばらしかったのか、
そうではなかったのか。

コスモスを握りしめていた彼の最後をみたとき、きっと前者だったのではないかと思った。
というか、そう思いたい。

ムダなシーンが1つもない西川美和監督の素晴らしい作品でした。
皆さんも書いているけど、役所さんの繊細な演技力は天晴れです!太賀くんもよかったなぁ。

自動車教習所で刑務所の中のように行進してしまう役所さんが可愛かった。
子供たちとのサッカーシーンも涙なしでは観られない。

マスクがあると涙と鼻水が隠せるのは助かりますね(笑)

空を見上げて余韻に浸りながら帰りました。
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