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すばらしき世界のAPlaceInTheSunのレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.4
苦難の末にやっと就職出来た三上を祝う会。
アコースティックギターで歌う「見上げてごらん夜の星を」で落涙。
「もう少しいい加減に、ズルく生きていいんだよ」
プレゼントされた黄色い自転車を嬉しそうに自転車でグルグル回る三上。号泣。

優しい。

すばらしくないこの世界にも、こんなに優しい人達はいる。

三上を支え続け、あそこに集まった人達以外の優しい人達にも思いを馳せてみる。

北村有起哉が演じる市役所職員。日本中の自治体の財源が厳しくなり職員もギリギリの人数に減らされてるだろう。
1件1件の案件に深くコミットするには自分の時間を削ったり、上司との折衝に疲弊するに違いない。でも三上の家を訪れ親身になって就職の斡旋をしていた。

三上が幼少の頃にお世話になった孤児員の職員。たまにピアノを弾きに来ていたというあのお婆さんも無給ボランティアか、お金目当てではなく心の奥底から湧き出る良心で動いていたのだろう。

三上が住んだアパートの大家さん。余計なトラブルも予想されるだろうに、前科持ちや、外国人労働者を温かく受け入れてるようだった。

「普通」の生き方をしてこれなかった三上に対して皆、出来る範囲の協力の手を差し伸べていた。

幸運にも、「普通」の生活が出来てきた自分。
自分はどちら側だったのか。これからどちら側になるのか。
手を差し伸べる側なのか、見て見ぬ振りをする側なのか。

ラスト。カメラが縦にパンして映し出される晴れ晴れとした青空と、何重にも深読み出来そうなタイトル「すばらしき世界」。
捉えようのない複雑な感情を掻き立てられる。紛れもなく映画的な恍惚。
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