扇

すばらしき世界の扇のレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.4
徹底したリアリズム。
西川美和作品は登場人物を絶対に典型枠に落とさないとする決意が見える。どんな人物にも良い面、悪い面があり、それぞれの立場を理解できるように場面を抜いている。それが人物に厚みを与え、可笑しさやサスペンスを生み、物語を豊かにしている。

出所した元暴力団の社会問題を下敷きに喪失した母を探す物語。三上は様々な境遇の母がいることを知り、少しずつ回復する。

三上の運転行為は暴力行為とイコールとして描かれており、自分ではコントロール出来ていると思っても全然出来ていない。急にエンジンをふかし、(恐らく赤ギリギリの)黄色信号でも車を突っ込ませてしまう。この三上が最後自転車をどういう環境でどう乗るのか。
オーソドックスだが胸を打つ。いい映画だ。
扇