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すばらしき世界のnobiiitaのレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.7
社会のなかで、我慢をすること、我慢のしかた、我慢をするとき、そういうことを覚えていく、やっとそのスタートラインにたったのに。

喧嘩をする三上はたしかにいきいきとしてたけど、涙を流し戸惑う三上のほうが、ずーっと魅力的だ。


結局、誉められたい、という感情が原動力なのか。
我慢せずとも誉められてしまう世界。
なにをやっても追い出されない刑務所。
そういう場所で生きてきてしまった男。

三上は“ケーキの切れない少年たち”(新潮新書)でもあるのかもしれないと思った。
ある種の“ケーキの切れない少年たち”を掬い(※救い、とは言いたくない)あげているのがヤクザのシステムでもある。社会におけるそういう現実もたしかにあって、だからこそ三上はこれまで生きてこられたのだろう。だが……。むずかしい。


我慢することばかりでたいしていいこともない、それでも、空が広いんだって気づいた三上の未来には新たな希望があったはずだ。

そしてあの、希望?なにそれおいしいの、なラスト。
三上に感情移入して“すばらしき世界”と悦に入ってるこちらを皮肉るかのような非情なラスト。
映画として見事というほかない…。
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